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社交不安障害(SAD)の 概念の成立と変遷 / さいごに

社交不安障害(Social Anxiety Disorder、SAD)の 概念の成立と変遷

さいごに

 本来、「病気」や「疾病」は社会や文化とは無縁で、純粋に生物学的に規定されるものです。ところが精神科診断は異なります。社会背景と関連しているのです。SADと社会的背景とはさらに密接に関連しています。この様なことを裏付ける中国の上海での研究があります。Chenら(1995)は8から10歳までの57名の恥ずかしがり屋で自己抑制の強い学生、59名の攻撃的な学生、352名の平均的な学生を本人、同級生からの意見、教師の評価および学業成績記録などの情報を集め、「同級生から受け入れられているか」、「教師による評価」、「自己記入式による抑うつ症状」、「表彰」、「リーダーシップ」、「学業成績」などの視点から比較しました。その結果、恥ずかしがり屋の生徒は平均的な生徒より同級生から受け入れられ、教師の評価が高く、学級で指導的な役割をし、表彰もされていました。さらには、恥ずかしがり屋の方が算数の成績が良かったのです。この研究では同級生全員に誰が好きか実名を挙げさせるなど、我が国で同じ研究を行うことは不可能です。しかし、恥ずかしがり屋が指導的な役割をすると言うことは、推測すると、本当は恥ずかしがり屋ではないのに、謙虚さを表すために恥ずかしがり屋を演じ、周囲も演じていることが正しいと受け入れているのです。それが社会が変化し、うまくプレゼンすることが必要となると、会議で黙っていることが許されなくなると、今まで恥ずかしがり屋を演じていた人は、実は雄弁であることを見せるでしょう。「恥ずかしがり屋」であることのメリットの有無によって、人がどう行動するかは大きく異なるのです。その時、本当の、しかし正常範囲の恥ずかしがり屋の人が生きにくさと直面することになるのです。

 SADでは、「治療者への期待が高いほど予後が悪い」(Mululo SC、2012)のですが、この生きにくい現代社会のなかで、治療側に色々な思いを託することもごく自然です。そのような思いを持つことが当然であることを受け止めつつ、一方では、治療を進める上ではご自身が恐怖・不安を回避することなく挑戦することが必要です。まず、治療に入る前に、この生きにくい時代の到来が患者自身の責任ではないこと、しかし、逃げることが解決にはならないことを、私たちは、その手間を抜くことなく、丁寧に何度も説明します。それによって治療をどう進めるか約束ができます。それに基づいて、この現代社会の生きにくさに、共に向き合い、共に自分らしい生き方を探してゆくことができればと思っています。

2013年5月24日 永田利彦

文献

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