社交不安障害SAD(社会不安障害、社会恐怖、あがり症)の治療
性格だから仕方ない
多くの人が、これは性格だから仕方ない、どうにも変えられない、と考えています。“全般性”社交不安障害SADの方は、中、高校校時代から(早い場合は小学生、稀には幼稚園生から、でも一番多いのは高校生になってから、大学生になってからです)、人との交際が苦手です。ですから、もう長い間、その症状とつき合っており、性格だから仕方ないと、これは自分の性格なんだと、強く信じ込んでいます。しかし、よく考えてみてください。これまで、あなたの性格は、「だめだ、だめだ」と考えることによって、より、なんでも避けるようになって、幼いときは天真爛漫だったのが今のように変わってきたのではないですか。だから、性格は変わるのです。ただこれまでは、不安のために、避ける方に変わってきたのです。しかし、前向きに取り組めば、今度は前向きに変わります。症状は治療的な努力によって改善します。ですから、あきらめずに取り組むことが重要です。
この様に「子供や思春期に始まる、生活全般におよぶ行動パターン」のことを通常は「性格」と言います。しかし、薬物療法などの治療によって改善すると、この「性格」も改善して、もはやそんな「性格」でなくなってしまいます。ですから、この部分を「変わらない」と考えるのは間違い、という意見が専門家の間でつよくなっています。ほかの性格も変化することが明らかになり、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5(2013年改訂)では、パーソナリティ障害をII軸として別扱いするのをやめました。
また、精神的な病気だと言われるのを極端に嫌う人も居ます。しかし社交不安はいわゆる精神病では全くありません。近年、精神科では病気という言い方から、生活に差し障りのある状態として、“障害”という言い方をするようになっています。新聞やテレビでパニック障害や摂食障害と言う名前をお聞きになったことがあると思います。それらは内科の障害と考えていらっしゃるかもしれませんが、アメリカやヨーロッパでは精神科医、心理学者が診ることが一般的です。それと同様に、社交不安も、1つの“障害”と考えて下さい。病気といったほどひどい状態ではありませんが(全くの普通の人とも言えます)、是非、治療した方がよい状態なのです。そして、精神科医が治療にあたるのが一般的なのです。
もう一度繰り返しますが、自分で自分自身に偏見、固定観念を持たずに取り組んで行かれることが重要です。気の長い取り組みは、必ず成果をもたらします。
その5 / 自己評価