摂食障害の成り立ち
はじめに
摂食障害の成り立ち(病理)についてどう考えられているのか、少し難しい話ですが、なるべく簡単に説明したいと思います。摂食障害(神経性無食欲症・神経性過食症・拒食症・過食症)の診断は行動面と精神面の両方で行います。行動面では、極端な摂食制限、過食、自己誘発性嘔吐、過剰運動などを行い、その結果としての低体重に陥ると神経性無食欲症 (拒食症・神経性食思不振症)となります。体重は正常範囲内で過食があると神経性過食症(過食症・神経性大食症)です。また精神面では、身体像の歪み(やせ細っているのに太っていると言い張る)、痩身への執着などが上げられます。ちょっとよく考えてみてください。先進諸国の現代女性の誰もが痩身をあこがれ、摂食障害の症状とされる行動を、少しはしたことがあるに違いありません(嘔吐は希ですが)。そこが診断基準の難しさですが、これをダイエット文化と称し、摂食障害の原因と主張する先生もおられますが、後で紹介するように、これも摂食障害の一側面に過ぎません。すべての摂食障害を1つの原因で説明できないころから、多次元的、多因子的であるされています。最近では、このような原因追及路線ばかりではなく、まずは治療的観点から、個々の患者の精神病理に目を向け、理解することの重要性が指摘されていますし、僕自身もそのように思っています。
摂食障害の成り立ち / A. 生物学的な側面