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自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害

 米国精神医学会の診断基準DSMは2013年に改訂され、DSM-5となり、「自閉性障害」、「小児期崩壊性障害」、「アスペルガー障害」、「特定不能の広汎性発達障害」は、社会的コミュニケーションと限定された繰り返される行動・思考の2つの領域の軽度から重度の障害を特徴とする自閉症スペクトラム障害 Autism Spectrum Disorder にまとめられました。これは、DSM全体で取り込まれた、カテゴリー診断からデメンションアプローチへという取り組みの結果です。

歴史と概念

 1943年にカナーKanner Lが「情緒的接触の自閉的障害」を示す11人の子供達を「早期幼児自閉症」として報告しました。1944年には「早期幼児自閉症(early infantile autism)」と呼ばれるようになりました。一方、1944年にオーストリアのアスペルガーがカナーの症例と類似した特徴を持つ患者を「自閉的精神病質」として報告しました。以後、社会性の障害を特徴とする様々な概念が色々な研究者によって提唱されました。当初は両親の性格や養育態度による心因性の障害であるとか、小児期の統合失調症などとも考えられていました。しかし1960年代後半にラターらの研究によって、何らかの生物学的要因が密接に関係している言語・認知の障害であるとされるようになりました。1970年代には、ウィングらが、カナーやアスペルガーが定義した様な患者以外にも、様々なレベルの自閉症的な特徴を持つ子供が存在していることを見出しました。その子供達は共通して、社会的相互作用の障害、コミュニケーションの障害、想像的活動の障害および反復的な行動パターンを示していました。そこで、カナー型やアスペルガー型の子供も含めて広く連続的な概念として「自閉症スペクトラム」と名付けました。

 アメリカ精神医学会の診断基準、DSM-IIIR(1987年)、DSM-IV(1994年)では「広汎性発達障害」という診断名が採用されました。広汎性発達障害は「自閉性障害」、「レット障害」、「小児期崩壊性障害」、「アスペルガー障害」、「特定不能の広汎性発達障害」の5つの診断カテゴリーが含まれていました。その後、レット障害は特殊な遺伝病であることが判明しました。一方で、その他の4つの診断カテゴリーの境界が明確ではないことがわかってきました。そこで、DSM-5(2013)では「レット障害」を除いた4つの診断カテゴリーが廃止されて、連続的な概念となりました。さらに、名称も自閉症スペクトラム障害に変更されました。

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