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D.不安障害、全般性不安障害、社交不安障害

D.不安障害、全般性不安障害、社交不安障害

1.臨床症状

 青年期・思春期の不安障害は非常に多いにもかかわらず、あまり注目されて来ませんでした。一方で、欧米での不安障害の精神療法、薬物療法の進歩にはめざましいものがあり、これら成人での知見が青年・思春期にも適応されつつあります。本章では、発症が青年期・思春期より以前であることが多い、分離不安障害、特定の恐怖症、診断が容易で全年齢に分布する強迫性障害は省き、青年期・思春期を好発年齢とする全般性の社交不安障害、青年期の全般性不安障害を概括します。

社交不安障害

 社交不安障害は、以前は社会恐怖と呼ばれ、1960年代までは、公衆の面前での行動(ほとんどは公の場でのスピーチ)への恐怖であり、恐怖症の一部に過ぎませんでした。しかし、DSM診断システム(米国精神医学会診断基準)が、全般性の社交不安障害(ほとんど全ての社交場面が不安の対象であるのみならず、対人相互的な関係にも強い不安、苦痛を生ずる)と回避性パーソナリティ障害との重複診断を認める立場に転じ、全般性社交不安障害を対象とした数多くの薬物の2重盲検試験や認知行動療法の比較試験が報告され、よく知られる不安障害の1つとなりました。この全般性の社交不安障害の好発年齢は中学生から高校生ごろで、青年期・思春期に一致します。

 何が不安の対象であるか、それぞれの障害で異なります。社交不安障害は「学芸会などで発表する」といったパフォーマンスのみならず、「親しくない人と話す」「教師など目上の人に会う」などの対人相互関係に対して強い不安を密かに抱いています。その様な学校行事の日に限って登校を渋る場合は社交不安障害を疑います。また、人との食事、学校のトイレ、着替えを嫌う場合もあります。人前での筆記を嫌う症例は日本では少なく、小切手にサインを求められる欧米の文化との差異が認められます。成人ではその様な不安、恐怖感が合理的でないと自覚していますが、子供の場合、自覚がないことが多いです。不安な社交場面で泣く、かんしゃくを起こす、母親の陰に隠れる、登校を渋るなどの行動が不安の表現であったりします。青年期・思春期の症例でも、注意深く面接を行わないと、本人の訴えのみからは社交不安障害であるのか全般性不安障害であるのか判然しないことも多いです。

 思春期、青年期の症例になると、異性を意識しだし、例えば席替えで横の席に男の子がきただけでも、緊張の余り登校困難となってくることさえあります。また、クラスの行事やクラス発表を回避するかも知れなませんし、筆記試験や発表をうまくできなかったり、体育の授業をさぼってしまうかも知れません。この様なことがひどくなると、通学の電車にも困難を訴え、学校に通えなくなり、職業にも就けなくなってしまいます。

 自分自身で「恥ずかしがり屋」であることを言い出してくれることはまずありません。反対に、「恥ずかしがり屋」であることを必死に隠すことが多いです。さらに厄介なのは、両親に対しては「恥ずかしがり屋」ではないので、両親は全く気がついていないことが多いのです。そこで、診察時などに患者がその年齢の他患に比べて「恥ずかしがり屋」であることに気づくことが重要です。

 社交不安障害では、特に全般性の場合、回避性パーソナリティ障害の診断基準に合致することが多いです。しかし、パーソナリティ障害の診断は成人期以降に行うべきであって、成長途中の青年期・思春期では診断することはできません。実際、青年期・思春期の症例は適切な治療により、もはや、パーソナリティ障害の診断基準に合致しなくなります。

表、社交不安障害患者が苦手な状況、パフォーマンス、相互関係

みんなの前で話す、プレゼンテーション、ミーティングで話す
みんなの前で楽器を演奏、踊る、チームでスポーツ、みんなでゲーム
他の人と食事
他の人の見ているところで書く(黒板に筆記)
公衆便所でおしっこ
筆記試験(静まりかえった中で教室に座っている)
他の人が既に座って待っている部屋に入る
そばに人がいて聞いているときに電話する。公衆電話
電話で話す
よく知らない人に会う、話す(見知らぬ人に道を聞く)
ホームパーティー、結婚式に参加する
異性と話す
上司、教師と話す
店に返品する
誰かに反対する、同意しない
レストランで注文する
よく知らない人と目を合わせる

全般性不安障害

 一方、児童青年期・思春期における過剰な心配性は過剰不安障害とされていました。しかし、社交不安障害の併存が多く、他の不安障害の前駆症状に過ぎないことが指摘され、DSMでは、全般性不安障害にまとめられました。

 全般性不安障害は学校などで自分が何か失敗をしないか、人に嫌われないか、周囲の期待に沿えるかを過剰に心配するなど、将来の出来事に対する非現実的な不安を特徴とします。大人びて見えることもあります。実は、不安が強いために自己懐疑的で、完全主義で、周囲からの批判に敏感で、すぐに傷つき、その様な不安から身を守るために、絶えず緊張し、防衛的にしているだけです。

 この様な症状は「自意識の過剰」と表現されていましたが、過剰不安障害が全般性不安障害に含まれたとき、「自意識の過剰」と「保証の必要性」は含まれず、一方で子供の場合、身体症状は1項目だけで可となりました。緊張のために頭痛、腹痛などの種々の身体症状を示すことが多く、一般科をまず受診することが多いです。特に、年齢が低い場合は、小児科などに、頭痛、吐き気、腹痛、動悸、全身倦怠感、朝起きられない、などの身体症状を訴えて受診します。この場合、身体疾患をまず疑う必要がありますが、何ら身体疾患が見つからなければ、精神障害を考慮することになります。その時、うつ病であることもあるが、不安障害、とくに全般性不安障害であることを考慮すべきです。

 自分自身で「心配性」であるとか、言い出してくれることはまずありません。反対に、「神経質」「心配性」であることを必死に隠す結果、無表情で上に述べたように大人びても見えます。しかし、社交不安障害の患者とは正反対に家の中ではもっと「神経質」で「心配性」であることが多く、両親からの情報は重要な助けとなります。

 また、不登校やひきこもりの精神科診断は不安障害だけではなく多種、多様の精神障害が含まれますが、近年、高機能自閉症・自閉症スペクトラム障害として理解するのが適切な症例が増えました。不登校、ひきこもりの場合、受診・通院自身が難しく、例え受診しても十分に診察できないことも多く、不安障害なのか高機能自閉症・自閉症スペクトラム障害なのか、はたまた別の病理か慎重に考慮することが要求されますが、そのための情報不足に悩むことも多いのです。

表. 全般性不安障害(小児の過剰不安障害を含む)、DSM-IV

A. (仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が、少なくとも6ヵ月間、起こる日の方が起こらない日より多い
B. 患者は、その心配を制御することが難しいと感じている
C. 不安と心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヵ月間、少なくとも数個の症状が、ある日の方がない日より多い)。注:子供の場合は、1項目だけが必要
  (1) 落着きのなさ、または緊張感、または過敏
  (2) 疲労しやすいこと
  (3) 集中困難、または心が空白となること
  (4) 易刺激性
  (5) 筋肉の緊張
  (6) 睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または落ちつかず熟眠感のない睡眠)
D. 不安と心配の対象が第I軸障害の特徴に限られていない。例えば、不安または心配が、(パニック障害のように)パニック発作が起こること、(社会恐怖のように)人前で恥しくなること、(強迫性障害のように)汚染されること、(分離不安障害のように)家庭または身近な家族から離れること、(神経性食思不振症のように)体重が増加すること、(身体化障害のように)多彩な身体的愁訴を持つこと、(心気症のように)重大な疾患があること、に関するものではなく、また、その不安と心配は外傷後ストレス障害の期間中にのみ起こるものではない
E. 不安、心配、または身体症状が臨床的に著明な苦痛または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている
F. 障害が、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものでなく、気分障害、精神病性障害、または広汎性発達障害の期間中にのみ起こるものでもない

2.治療

 治療は環境調整、行動療法、認知行動療法、家族療法、力動的精神療法、薬物療法を含めた多次元的なものになります。治療には必ず、母親(時には父、祖母)を含めるべきです。まず、現在、不安障害という治療可能な精神障害に罹っていることを、患者と両親によく説明することが重要です。不安障害では、不安なことにあえて挑戦することが特に必要不可欠となるため、一時的に不安は高まりますが、結局は、それが不安を治療する方法であることを、よく理解してもらうことが必要です。

 行動療法はこの様な年齢に対する治療として有効です。患者だけでなく、両親、家族、学校を含めて評価と治療を繰り返します。介入にはモデリング、暴露による脱感作、ロールプレイ、リラックストレーニング、強化などがあります。いずれにせよ、強化子を家族と協力しながら探していくことが重要です。

 薬物療法は、この様な年齢に対して十分に確立した治療法とは言えません。しかし、児童を対象とした行動療法などの専門家が少ないことを考慮すると、現実的な選択でもあります。

 ベンゾジアゼピン系はよく使われていますが、依存性の形成への注意が必要です。欧米ではクロナゼパムが一般的であり、長時間作用するため精神的な依存が少ないですが、本邦では不安障害の適応は取れていません。さらには、長期連用により耐性を形成するので、期間を限って使用すべきです。また、行動療法と併用すると、行動療法の効果が自覚されにくくなるので注意が必要です。

 SSRIの成人の不安障害に対する有効性は数多くの2重盲験試験により確立しています。しかし、児童期や青年期・思春期を対象とした2重盲検試験は少ないです。また、若年者の大うつ病性障害へのSSRIの投与は自殺未遂や自傷行為を誘発する可能性が指摘されており、十分にリスクとベネフィットを考慮して投与し、焦燥の増悪などに十分注意しながら使用します。実際には衝動性が高いかどうか、焦燥感がいつ爆発するか分からない症例であるかどうかの評価さえきっちりとすることができれば、この年齢でも(思春期、青年期)、SSRIによる薬物療法は非常に安全で有効です。

 薬物療法の終了に際しては、依存性を生じる可能性のあるベンゾジアンピン系の薬剤から漸減し、その次にはすべての薬剤を漸減し、再発がみられないか観察します。

 分離不安障害か過剰不安障害をもつ子供のお母さんの93%が何らの不安障害の生涯診断を有していたという研究報告があります。この様な母親の不安が子供の不安に影響を与えるために、母親自身の「心配性」への配慮が不可欠です。お母さん自身が不安のために子供の障害を認められず否認し治療を妨害したり、不登校などに対し過度に懲罰的に接したりすることがあります。さらに、子供(患者)の行動や、認知、信念といったものは、家族、特に母親の影響下で成立してきたものであることが多く、その修正に当たっても協力が必要です。治療資源があれば、母親にも同時に薬物療法的、精神療法的な治療を同時進行する方が望ましいです。また、家族療法として、家族全体の治療参加を促す場合もあります。

 思春期、青年期の不安障害の自然に回復することもありますが、再発しやすく、一部は遷延化し、成人期に何らかの他の精神障害を発症する恐れがあり、長期の経過観察が望ましいのです。

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