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C.摂食障害

C.摂食障害

1.臨床像

 摂食障害は体重が低いにもかかわらず、正常体重を維持、または回復することを拒否、さらには恐怖さえする神経性食思不振症と、一度に大量の食物を摂取し、もう身体的に食べられなくなるまで止まらず、その後、体重増加を防ぐために自ら嘔吐したり、下剤や利尿剤を乱用したり、絶食に近い摂食制限を行ったりする神経性過食症に分けることができます。

 疫学的に国や地域により大きな偏りがあり、先進諸国の若年女性に多く、男性や発展途上国では少ないです。日本もこの数十年、有病率の急激な増加を経験したが、既に高止まりしてきた感があります。好発年齢は青年期であり、女子高生での発症が最も一般的です。一般に若年の発症ほど予後が良いとされていますが、「若年型」の予後は反対に不良であることが知られています。「若年型」の定義は定まっていませんが、狭義では小学生、広義では中学生まででの発症をさします。

 臨床像は、表にお示したとおりです、神経性食思不振症、神経性過食症ともに、自己評価が体重、体型によって過剰に左右されこと、すなわち身体像の歪みといわれる症状が特徴的です。神経性食思不振症では無月経、産毛の密生、徐脈、低血圧、低体温、浮腫といった身体症状が認められます。過去、脳下垂体前葉の障害と考えられていた時代がありました。そこで、無月経が診断基準に残されていました。しかし、近年、摂食障害はより、心理的、パーソナリティと環境の相互的作用が発症に絡むと考えられ、無月経を含む身体症状は、単純に飢餓状態に続発するものと考えられつつあります。アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5(2013)では、今回の改訂に伴い、無月経が外されました。低体重にもかかわらず、階段の昇降を繰り返したり、長時間歩き回ったりする姿も印象的で、過活動とさます(低体重すぎて、走るなどの過激な運動は稀です。ですが22kgの患者さんが数時間も歩き回ることはよくあります)。また、元来、こだわりの強い性格や完全主義の傾向の強い場合が多いですが、病気の進行につれて、さらにこだわっていきます。この側面は、強迫性パーソナリティ障害と捉えられています。しかし、体重が回復すると、このこだわりも回復します。一方、神経性過食症では、摂食制限後のリバウンドや、気晴らし食いとして始まり、体重の増加を防ぐために、嘔吐や下剤を乱用し、そのため、永久に満腹にならず、常に食物のことで頭がいっぱいになります。これも過食、嘔吐の改善に伴い改善します。

2.病因、経過、予後

 病因については未だ明らかにはされていませんが、遺伝、環境、社会が相互的に関連して発症すると考えるのが自然です。欧米では第2世代に突入したと言われて久しく、母と娘の両方が摂食障害であることも珍しくなくなっており、これも環境と遺伝の両方の関与を示唆しています。

 通常の医療機関で受けいれられず、大学病院の精神科などで入院治療を受けた摂食障害の予後は極めて不良です。入院治療を受けた神経性食思不振症は10年以内に数十パーセントが死亡しており、また、神経性過食症もなかなか改善していません。神経性食思不振症と神経性過食症の相互の病型の移行が頻繁に見られ、相互に移行しながら、長期間を経ても、なお、摂食障害の範疇に留まっています。一方、青年期の女性によく見られる、行き過ぎたダイエットの結果、一時的に診断基準に合致する状態となった予後の良い軽症例と、この様な重篤な摂食障害が連続した病態であるのかどうかは議論のあるところですが、実際の経験では、明確な線引きは難しく、症状の重さなどを総合的に判断する必要があります。

 この様な治療の難しさを加速させるのが、併存症の多さです。表に上げたとおり、精神科を受診する大多数が、抑うつや不安、不登校、ひきこもり、自傷行為、自殺未遂を繰り返すことが多く、予後はこれらの併存する病理により大きく左右されます。さらに、強迫性、回避性や、演技性、境界性パーソナリティ障害といった両極端なパーソナリティ障害を併存することが多く、さらに臨床像を複雑なものにしています。

  神経性食思不振症 神経性過食症
やせ願望、肥満恐怖 やせにとらわれており、正常な体重に復することを拒否、恐怖している(アジア人は明確に口にしないことがあると言われている)。 体重が増えること、肥満になることを恐怖している。やせたいと強く望んでいる
身体像 自己評価が体重の増減に過剰に左右される
体重 やせ(標準体重の85%以下、Body Mass Indexが17.5 kg/m2以下) 正常体重範囲
食行動 意識的に低体重を維持している。 摂食制限型:食べる絶対量が少ない 過食排出型:時に大量に摂食し、その後、嘔吐や下剤乱用により体重回復を阻止 過食(短時間の間に大量の食物を摂取し、食べられなくなるまで止まらない)と体重増加を阻止するために極端な摂食制限、排出行為(自己誘発性嘔吐や下剤乱用)を行う 排出型:自己誘発性嘔吐や下剤乱用を伴う 非排出型:上記、排出行為を伴わない
併存症 大うつ病性障害、社交不安障害、強迫性障害、パニック障害、アルコール依存症
パーソナリティ 強迫性・回避性・依存性パーソナリティ障害、境界性・自己愛性、演技性パーソナリティ障害
行動 不登校、ひきこもり、自傷、自殺未遂
移行 相互に頻繁に移行(神経性食思不振症←→神経性過食症)

3.治療

 青年期に発症した摂食障害の中には、治療を受けなくとも自然に終息するものも多いです。実際、発症後数ヶ月以内に受診した症例は、心理教育だけで早期に回復することも多いのです。

 ある程度以上の重症度の症例では、治療継続自体が困難となります。自己評価の低い、神経性食思不振症では、低体重のことを達成し、獲得した「戦利品」「優勝トロフィー」と考えており、その「戦利品」を手放すことに徹底的に抵抗します。その姿は高慢にしか見えないこともあります。この状態を、「病識がない」と言い表すことが多いですが、高慢の陰に隠れた自己評価の低さや虚しさを引き出し、いかに誤った自己評価の上げ方であるかを認めさせ、治療意欲を引き出すかを考えるべきです。文字に書くといかにも簡単に見えますが、実際には治療側の忍耐と技術が要求される部分です。神経性過食症では、低体重になり損ねた「落第者」「敗者」と考えており、打ちひしがれており、異常な食行動の改善より、少しでも低体重になることを追い求め、本来の健康な食生活へは、なかなか顔を向けません。受診も両親などに無理矢理連れてこられたことが多く、なかなか、前に進みません。また、自ら受診した場合は、どのようにして痩身を手に入れるかばかりが関心の対象で、治療とは全く違う方向を向いています。そこで、丁寧に話しを聞きながら、何故これほどまでして、低体重を追い求めなければならないのか、患者の心(劣等感や自己評価の低さ、虚しさ)を理解することが必要なのです。

 具体的な治療法としては、入院治療と精神療法とが主になります。神経性食思不振症で低体重となった場合や、神経性過食症で差し迫った自殺の危険がある場合、入院治療が望ましいとされます。しかし、治療者が親のいいなりになって、一方的に患者を強制入院させても、反対に入院後にこじれることも多く、入院前より反対にさらに体重が低下して、患者自身、家族、治療者共に不満足なままでの退院となることが起こります。そこで、入院までの道筋が重要なのです。入院して点滴をすれば治ると「誤解」している家族が多いのです。現実には、単純に入院しても、点滴だけではさらに体重が低下しますし、再摂食症候群のリスクも高まる一方、患者さんは食事を摂取するはずもないので、行動療法などの治療的構造を家族が理解し、患者にそれ以外の選択肢のない状況を徐々に認めてもらうのが良いことです。認知行動療法は神経性過食症に対しては最もエビデンスのある治療法です。神経性過食症に対する認知行動療法は既に数多くの出版があり、それらを参考に進めることができます。しかし、なかなか、成書にある通りには治療が進みませんから、治療開始前に動機づけ面接と言われる治療意欲を高める治療法も注目されています。対人関係療法はすぐには効果がありませんが、時間が遅れて効果が出てくることが知られています。思春期、青年期の症例では家族療法も有効です。力動的精神療法は比較試験が困難なためエビデンスは少ないですが、現実には頻繁に行われている治療法で、効果が実感されています。

 薬物療法に関しては、摂食障害では、入院治療や何らかの精神療法を行っている場合、その効果を増強させることはありません。一方、摂食障害の精神療法や入院治療は手間が掛かり、実施が困難なことが多く、その様な場合、薬物療法も選択肢の1つです。神経性過食症への抗うつ薬、神経性食思不振症への第2世代抗精神病薬の投与は、精神療法を全く行ってない状況では効果のあることが知られています。

 併存症によっては、その併存症の治療が摂食障害の治療より優先することがあります。青年期では成長過程であるので診断はされませんが、境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害などがある場合、その治療を優先します。自傷行為や繰り返される自殺未遂も、それらのパーソナリティ障害を併存する症例ではよく認められ、摂食障害としてよりパーソナリティ障害として治療を行うべきです。その場合の特徴として摂食障害発症以前からの自傷、自殺未遂が特徴的です。また、青年期では少ないですが、アルコール関連問題が成人期以降の慢性例では頻繁に認められ、アルコール治療施設への治療依頼が必要となることがあります。摂食障害がアルコール依存症に陥ると非常に予後が不良となることが知られています。

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(39)摂食障害・前編にて
摂食障害について解説いたしました。(2024/02/26放送)
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社会不安障害について説明いたしました。 (2015/01/19放送)

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