成人ADHD
以下は、現在、大きな話題となっている、成人ADHDは小児ADHDと全く別物であることを38年間の前向き縦断研究によって証明した論文です。
(翻訳した先生に頂いたものを掲載します)
Moffitt TE, Houts R, Asherson P et al. Is Adult ADHD a Childhood-Onset Neurodevelopmental Disorder? Evidence From a Four-Decade Longitudinal Cohort Study. Am J Psychiatry 2015: appiajp201514101266.
原文は下記を参照してください(図表なども載せれられないため抄訳のみです)
成人期ADHDは小児期発症の神経発達障害か?
40年間の縦断的コホート研究による根拠 (翻訳:本山 美久仁 先生)
目的
成人期ADHDは小児期発症の神経発達障害であるとの仮説が広く知られているが、成人期ADHD患者の小児期について言及した前向き縦断的研究はまだ行われていない。今回、単一コホート内で実施した、成人期ADHDと診断された者のフォローバック解析(過去のデータと付き合わせる)と小児期ADHDと診断された者のフォローフォワード解析(前向き縦断研究)について報告する。
方法
ニュージーランドのダニーデンにおける、1972-1973年の出生者を代表した出生コホート1037例を38歳まで追跡調査した(保持率95%)。ADHD症状、関連する臨床的特徴、併存疾患、神経心理学的障害、ゲノムワイド関連解析による多遺伝子リスク、生活機能障害指標について評価した。データは参加者、参加者の親、教師、その他の情報提供者、神経心理学的検査の結果、行政記録から収集した。成人期ADHDはDSM-5によって診断した。
結果
小児期ADHDの有病率は6%(大部分は男性)で、小児期の併存疾患、神経認知障害、多遺伝子リスク、成人期に残存する生活機能障害との関連性が認められた。また、成人期ADHDの有病率は3%(性差なし)で、成人期の物質依存、成人期の生活機能障害、専門家受診との関連性が認められた。予想に反して、小児期ADHD群と成人期ADHD群には実質的に重なりが認められず、成人期ADHD群の90%には小児期ADHDの病歴がなかった。また予想に反して、成人期ADHD群では、小児期または成人期における神経心理学的障害も、小児期ADHDの多遺伝子リスクも認められなかった。
結論
本研究の結果より、成人期にADHD症状が認められる症例が、必ずしも小児期発症の神経発達障害を有しないという可能性が提起される。もしこの結果が他の研究でも再現されるようであれば、分類システムにおけるこの障害の位置付けについて見直し、成人期ADHDの病因について調査研究を行う必要が生じる。