はじめに
成人期ADHDの診断は、同一個人で小児期から成人期にかけて認められる、小児期ADHDと同じ神経発達学的病因による同一障害であるとの仮説に基づいている。DSM-5では、成人期ADHDと小児期ADHDはともに神経発達障害として分類されており、「ADHDは小児期に始まる」と記述されている。また、成人期ADHDの治療は小児期ADHDの延長線上にあるものとして捉えることが推奨されている。しかし、成人期ADHDは神経発達障害であり小児期に始まるという二重の仮説は、成人ADHD患者の小児期についての前向き縦断的研究でまだ検証されていない。
本研究では、同コホート内で、小児期に診断されたADHD群のフォローフォワード解析と成人期に診断されたADHD群のフォローバック解析を行っている。本研究では、成人期ADHDと小児期ADHDの関連要因が同一であるかどうか検証した。
方法
対象者
本研究の対象は、ダニーデン学際的健康発達研究の参加者である。参加者(N=1037、出生条件を満たした対象者の91%、男性52%)は全員、1972年4月~1973年3月にニュージーランドのダニーデンで出生して同地方に居住し、3歳時の最初の評価を受けた者とした。コホート成員は主に白人で、部分的に非白人の家系を有する者は7%未満であり、南島の人種分布と一致していた。出生時、3、5、7、9、11、13、15、18、21、26、32、38歳時に評価を行い、最終年齢である38歳時に、まだ生存してる1007人(95%)を本研究の対象とした。評価の際には、対象者が研究施設を1日受診し、面接と検査を実施した。
小児期ADHDの診断
小児群は、ダニーデン研究で1984-1988年の11、13、15歳時にADHDと診断された者。症状の確認は、11、13歳時には小児精神科医により、15歳時には訓練を受けた面接官により、子供のための診断面接法(小児版)を用いて行われた。また、親/教師によるチェックリストも用いられた。DSM-IIIで要求される7歳以前の症状発症については、5、7歳時の親/教師による簡易チェックリストで確認した。DSM-IIIに基づき、小児期ADHD 61例が特定された。
成人期ADHDの診断
症状の確認は、被験者が38歳時、診断用構造化面接を通して行われた。本研究の面接では、DSM-5におけるADHDの18症状が運用できるよう、成人対象の行動例27項目を使用した。成人期ADHD 31例が特定された。対照群は、ダニーデン研究でADHD診断歴のない920人とした。
結果1【 Table1:小児期と成人期に診断されたADHDの診断的特徴】