結果3【Table3:小児期および成人期に診断されたADHD関連の神経心理学的評価の結果】
小児期における認知機能障害
小児期ADHD群では小児期に有意に認知機能障害が認められた。同群の3歳時における脳の統合性(integrity)についての項目のSDは、基準点より0.55点低かった 。また、学童期のIQ平均値は基準点より10点低かった。読書力、Trail Making Test, part B、言語学習想起遅延の障害が認められた。一方、成人期ADHD群では小児期に、読書力の軽度遅延を除いて有意な認知機能障害の根拠は認められなかった。
成人期における認知機能障害
小児期ADHD群は、38歳時の平均IQは基準点より10点低かった。小児期ADHD群のケンブリッジ神経心理学的自動検査(CANTAB)の「持続的」迅速視覚情報処理検査に障害が認められ、注意覚醒スコアが低く、思考過程を省略したり、反応が早過ぎたりするエラーが多く認められた。Trail Making Test, part Bと言語学習想起にも有意な障害が認められた。検査でこうした障害が明らかになったものの、小児期ADHD群の成人期における認知機能に関する訴えは僅かに増加しただけであった。
一方、成人期ADHD群では、知覚統合で対照群より有意にスコアが低く、迅速視覚処理検査で多くのエラーが認められたことを除き、成人期に検査で認知機能障害を認めることは比較的稀であった。成人期ADHD群は、検査で小児期に障害が認められず、成人期に軽度障害が認められたが、認知機能に関する訴えが多かった。
多遺伝子リスク
ゲノムワイド関連解析で検出された小児期ADHDの多遺伝子リスク値は、小児期ADHD群では有意な増加が認められたが、成人期ADHD群では増加は認められなかった。
結果4【Table4:小児期および成人期に診断されたADHDに関連した成人期の生活機能】