摂食障害の成り立ち
治療的観点から
どのような病因論も治療的な有用性がなければ意味がありません。セロトニン仮説も、肝心の選択的セロトニン再取り込み阻害薬の二重盲検試験の結果が芳しくありません。一方で病態や精神病理は「比較的裕福な家庭で育ち、品行方正で、成績優勝な女子学生」から、小学生までの低年齢化、既婚症例を含め中年以降の症例による「高年齢」化、男性例の増加などの多様化を経て、単純化できなくなっていっています。
1. 超診断モデル
神経性無食欲症と神経性過食症の亜型間の移行は頻繁で、亜型分類にとらわれず超診断的(transdiagnostic)に、摂食障害に直接関連しない完全主義、中心的な自己評価の低さ、対人関係の困難、感情不耐性をも治療の対象にすることが提案されています。大阪で長く「摂食障害の専門的治療」を提供していると、食事の内容や身体像を治療の対象にしても効果は極めて限定的で、その背景にあるものへの治療アプローチの重要性を感じさせられます。
2. パーソナリティ障害も含めた分類
また、摂食障害症状のみならずパーソナリティ障害の症状とされる部分をも含んで、高機能・完全主義的、統制障害、抑圧的に分類しようとの試みもなされています。これは摂食障害発症以前から自傷や自殺未遂を繰り返している1群や、全般性の社交不安障害の発症が先行し、社交不安障害を優先して治療することで摂食障害も改善する1群の存在と一致します。
摂食障害の成り立ち / さいごに