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その2/社交不安症(社交不安障害)概念の拡張と変遷

その2/社交不安症(社交不安障害)概念の拡張と変遷

 現代の社交不安症(社交不安障害)の概念は、この40年で大きな拡張・変遷を遂げたのです(Nagata, Suzuki & Teo, 2015)。今でも、専門家でも社交不安症(社交不安障害)すなわちパフォーマンス恐怖症、プレゼン恐怖症としか考えておられない方もいますが、現実には対人相互関係(1対1の相互的な会話のやり取りなど)への不安の病理と取って代わったのです。そして、そのような広汎な行動、行為への不安は、恐怖症といった限局的な症状とは異なり、パーソナリティ障害と考えられ、治療困難と考えられていました。それが治療可能となった歴史があるのです。


 ジャネ (Janet, 1903)が、見られている前で話す、ピアノを弾く、字を書くことを恐れる症例を、社交恐怖(social phobia)という名称のもとに記載したのが初めてとされています。しかし独立した精神障害ではありませんでした。それが、1966年にマークスとヘルダー(Marks & Gelder, 1966)が恐怖の対象が異なれば、男女比や発症年齢が異なることを報告して、1980年改定のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-IIIで初めて独立した項目になりました。このときには恐怖症の1つであるとの位置づけで、社交恐怖は、虫に対する恐怖症、高所恐怖症と同等の扱いだったのです。さらに回避性パーソナリティ障害が除外規定に入っていました。恐怖の対象がほとんどのパフォーマンスや社交状況に及ぶ場合はパーソナリティ障害であり、社会技能訓練が適応とされていました。それが、1985年にリーボウィッツら(Liebowitz, Gorman, Fyer & Klein, 1985)が「それまで行動療法家にしか知られていない不安障害」、「無視されてきた不安障害、社交恐怖」という総説を発表し状況は一変しました。ほとんどの社交場面を恐れる全般性の社交恐怖も、DSM-IIIまでの社交恐怖と変わらないことを報告したからです。その結果、1987年改定のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-IIIRでは全般性の社交恐怖が含まれ、回避性パーソナリティ障害の除外規定がなくなりました。


 この様な概念の広がりは、新しい治療法の登場と無関係ではありません。1985年当時はモノアミン酸化酵素阻害薬しかありませんでしたが、全般性の社交不安障害にも有効でした。このモノアミン酸化酵素阻害薬の服用中にはモノアミン禁止食が必須で服用するのが大変でした。診断基準ができたことで、多くの無作為割り当て研究(有効性のエビデンスとして評価の高い研究方法)がなされ、Selective Serotonin Reuptake Inhibitors (SSRI)と認知行動療法の有効性が確立されました。


 アメリカ精神医学会診断基準のDSM-IV(1994)改定では社交不安障害が括弧に囲まれて併記されるようになりました。明確な定義はありませんが、一般的には恐怖は対象が明確で急性のものであるのに対して、不安は対象が漠然としていて慢性のものです。この呼称変更は、社交不安障害が虫恐怖症、高所恐怖症といった恐怖症とはまったく異なった病態を包含するようになった結果です。社交不安障害の有病率の上昇傾向が報告されています(Heimberg, Stein, Hiripi & Kessler, 2000)。中でも増えているのは1対1の相互的な会話といった対人相互関係への不安が主な病理で、そちらは増加しているのですが、プレゼン恐怖症といった、パフォーマンス恐怖症は増加していませんでした。またさに社交恐怖から社交不安症への病理の転換です。


 2013年のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5の改定では、社交不安症(社交不安障害)と名称も変更され、DSM-IIIまで、主な病理とされてきた社交恐怖、パフォーマンス恐怖症がパフォーマンス限局型として隅に追いやられ、対人相互関係への不安の病理が取って代わりました。このパフォーマンス限局型は、0.3~3.5%と社交不安症(社交不安障害)全体の中で極めて少数派です(Nagata et al, 2015)。


 世界保健機構の診断基準ICDも1992年6月出版のICD-10から2018年にICD-11に改定され、DSMと同様に社交恐怖から社交不安症(社交不安障害)に名称が改定されました。以前のバージョン(ICD-10)では、「人々から注目される場面を恐怖し、社交的な場面を避ける」という文言から始まりますが、最新バージョン(ICD-11)では「対人相互関係(例えば会話とか)、見られること(食べる、飲むのを見られるとか)、人前でのパフォーマンス(スピーチなど)への過度で顕著な恐怖や不安」と、まず、対人相互関係への不安から描き出されることになったのです。

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