社交不安障害SAD(社会不安障害、社会恐怖、あがり症)の治療
自己主張が苦手なひと
このように言いますと、社交不安障害(SAD、社会不安障害、社会恐怖)とあがり症の区別がなくなります。また、日本で言われてきた対人恐怖症とはどう違うのでしょうか。対人恐怖症と社交不安障害SADとの関係は難しいところです。また、別の機会に、対人恐怖症に関する、これまでの小生の研究結果を紹介することができれば、と考えておりますが、このホームページにも、対人恐怖症の症状を紹介しております。
別のページで説明したとおり、社交不安障害SADの概念が大きく変わってきました。最初は、必ずスピーチ恐怖症のように、公衆の面前でのスピーチを極端に恐怖し、その場面を必ず回避しなければなりませんでした。それが、ほとんどあらゆる社交場面にたいして不安を持つ場合も「全般性」として含まれ、回避性パーソナリティ障害との重複診断(これを併存症といいます)も認められ、その代わり、その場面を必ず回避する必要がなくなりました。その結果、スピーチに対して不安程度で恐怖まででなくとも、対人相互関係に対して不安を持つ場合も、社会恐怖と診断されるようになったのです。具体的には、朝礼で話をするのが苦手ではあるが、それで出社拒否(登校拒否)になるわけではないが、日々の生活で、同僚(同級生)から何か言われると断れないひとも、社会恐怖の診断がされるようになったのです。で、社会恐怖と名称が実情に合ってないため、社交恐怖、さらには社会不安障害、そして社交不安障害SADと名称が変わってきたのです。
最新の2013年改訂のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5では、もはや社交不安障害SADの全般性を亜型として区別することに大きな意味がなくなったことから、全般性の亜型が廃止されました。反対に、DSM-5ではパフォーマンス恐怖症だけの人(スピーチ恐怖症が主で他の症状がない人)の方を区別してパフォーマンス限局型とするようになりました。まさに軒先(庇)を貸して母屋を取られてしまったのです。