社交不安障害SAD(社会不安障害、社会恐怖、あがり症)の治療
どれぐらいの人がこの障害を
日本でどのぐらいの人がこの病気を持っているかは良くわかっていませんでした。最近、ようやく報告された報告によると、12ヶ月に区切って、ある日本の地方の人がこの精神障害に罹っている率(12ヶ月有病率)は0.8%でした。アメリカでの大規模な研究では、大変高い数字が報告されています。13.3%(Kessler RCら1994)とか、8%(Magee WJら1996)とかの人がこの病気を持っているといわれております。どちらというと、女性に多いようですが、診療所に受診するのは、男性の方が多いようです。ですから、日本は米国のまだ1/8しかこの障害に罹っていません。中国やその他のアジア諸国ではもっと低そうで、まだ十分な統計は出ていません。しかし、本当にこんなにちょっとの人しか社交不安障害SADでないかというと、それは違います。というのは、難しい言葉でコホート効果という指標があり、その指標では、同時期に調査した国の中で日本が最も高かったのです。このコホート効果は、将来、どの程度、有病率が上昇するかの指標で、それから考えて、今、再び、研究がされようとしていますが、有病率が数倍に上昇しているのではないかと思われます。
社会的背景との関係も強いとと思われます。日本では昔、会議では上の人の言うことを黙って聞いている方が無難でした。発言しない方がよかったのです。しかし、今、日本の社会は大きく変わってきています。つい10年前までは生涯を1つの会社で過ごすことが多く、職業を変える人は「職を転々とする」と、軽くみられていました。それが、今、大きく変わりました。転職することもキャリアの1つとなりました。会議で発言しない人の評価は低く、自己主張できないと生活上(職業上、学校生活上)、困ったことになるようになってきています。同じ程度の症状でも日常生活への影響は、だんだんと大きくなっているのです。
ですから、現在は日本ではアメリカに比べてずっと少ないですが、確実に、社交不安障害SADの方は増えていくと考えられます。
その7 / 森田先生